家庭における密着した親子関係の中で、親の問題と子どもの問題、あるいは親の心と子どもの心の境界があいまいになってしまう場合があります。世代間の線引きがしっかりできていないと、次の世代、またその次の世代に、その家庭や親の問題、ネガティブな傾向が持ち越されてしまう可能性があります。
世代間の境界があいまいであれば、親子の逆転が起きます。そんなつもりはなくても、知らず知らずのうちに起きてしまうことになります。夫婦関係が悪い、経済的に余裕がないといったこともその要因になりますが、親が心に不安や不調、問題を抱えている、また精神的に未成熟であることなどにより、無意識的に境界をおかして子どもに寄りかかることになれば、子どもが親の受け皿にならざるを得ず、子どもが子どもらしく過ごす、子どもらしい感情を表現する、といった子どもらしさ、その子らしさを奪ってしまうことになりかねません。ありのままでの自分ではいられず、いつのまにか偽りの自己を築き上げてしまう可能性もあります。
本来は、親が子どもの様子や表情等を観察し、言葉がつたなく伝えきれないその子の気持ちや考えをくみ取り、解消や解決に向かうことが望まれますが、親と子の役割が逆転し、子どもの方が絶えず親の顔色や機嫌をうかがい、親が求めている行動や考え、感情についてまで、親が気に入るような、親を楽にできるような選択や結論を出す傾向を知らず知らず身につけてしまうのです。親の状態ややり方によっては服従的になることさえありますが、子ども自身は、あたかもそれが自らの選択であるかのように錯覚してしまうため、子どもが無理をしている、偽っているということに親自身もなかなか気づけず、問題が長引くことになります。こうして子どもは偽りの自己を発達させてしまうことになるのです。
子どもは、親の未熟さを受け止め補うかのように急いで成熟を遂げ、また親の不安や不満に向き合い、親の問題を肩代わりするかのような方向へ無意識的に成長の舵を切り、自分らしさや自分という感覚を持てないまま大人になっていくことになります。
よく言われるアダルトチルドレン、インナーチャイルドといった状態や状況のみならず、幼いころからうつ傾向を帯び、思春期を過ぎるころにはパーソナリティ障害と診断されるなど、さまざまな精神的不調を抱え、人間関係をはじめ学習や仕事面のやりづらさにつながり、心身が疲弊しやすく、生きづらさとなって人生が立ち行かなくなる場合も少なくありません。
家庭の問題、親の問題が次の世代へ持ち越されてしまう世代間連鎖は、次の世代その次の世代と世代を超えるたびに、その状況が悪化し程度が強くなると感じます。
「親も大変だった、苦労した…だから(自分が苦しくても)仕方がない」という話をよく聞きますが、仮にそうだとしても、親の生きづらさと自分の生きづらさを相殺して帳消しにし、自分の苦しさを抑え込んだりあきらめたりするのは違いますし、逆にそれをすれば、今度は自分の子どもの世代に問題を持ち越すことになりかねません。自分がかつての親に同一化していることにも気づかないままでしょう。
過去を振り返り親を責めるということではなく、自分に何が起きたのか、自分が今のような不調、生きづらさを抱えるに至った理由や背景を理解していくことが、問題の改善や解消につながります。
親の問題は、親がそれを認め向き合い解消に努めるべきだった、そう捉えてよいのではないかと思います。そして自分の問題は自分が向き合い解消に努めていけると、次の世代に持ち越す可能性はなくなっていきます。負の連鎖を止めることができるのです。
また、子どもが成人した後、あるいは結婚して家を出た後であっても、何かと介入しがちな親御さんがいます。お子さんとの心の境界にしっかり線引きをすることができていないため、子どものことをご自分のことのようにとらえ一喜一憂しがちです。おそらくその親御さんも同じように親の介入を受け続け従わざるを得なかったのかもしれません。ご自分が苦痛だったことではあっても、当たり前のこととして無意識的にやっているのではないかと思います。子どもが成人した後は、子どもの意思を尊重また信頼し、親御さんは親御さんの人生と幸福に向きあえると良いのではないかと思います。
親は親、子どもは子ども、それはそれ、これはこれ、と問題の領域を明確にして線引きすることが、互いに侵入し合わない心の線引きにつながります。そしてご自分の子どもの世代、さらには孫の世代の心の健やかな成長、成熟につながっていくのではないかと考えます。
心当たりがある方は、一度ご相談にいらしてください。お気持ちが楽になり解決や解消に向かえるようお力になります。
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