自己愛とは、「自分で自分を愛する気持ち」です。もともとは自分に愛情と世話、共感を与えてくれる母親のひとみに映る自分の姿に対する満足や安心感と捉えられます。自尊心あるいはプライドと似ているように聞こえるかもしれませんが、それらがご自分で意識でき、周りも理解がしやすいものであるのに対し、自己愛は自分にとって無意識的で、周りからも理解されにくいものと言えます。

したがって、自己愛は、その人に自分と母親さらには他人という境界的意識が芽生える以前のこころの状態(おおよそ2歳半~3歳まで)を表しています。その頃の子どもにとっては、自分がすべてであり自分への愛しかありません。乳をくれる最も身近な対象である母親に対しても、自分のすべてを受け入れ愛し共感してくれることを無意識的に求めます。
母親はそれに応えようとしますが、育児状況や家庭環境、母親自身の精神状態、パーソナリティ傾向等によりそれを十分に満たすことができなければ、子どもの自己愛が傷つくと捉えられます。

そうした原初的な傷つきが無自覚であることはやむを得ないことですが、その満たされなかった自己愛的欲求を、成長した後も他の人間関係において無意識的に求めたり、当時の恐怖や怒り憎しみや羨望を無意識的に相手にぶつけたりすることにより、トラブルが生じてしまいやすくなります。

養育環境や発達過程あるいは親子関係に自己愛の傷つきの始まりがあるとするなら、家庭内や親子関係でその欲求が再燃しやすくなります。そのことに気づかないまま親になると、自分の子どもの自己愛を満たすことより、親である自分の傷ついた自己愛を子どもに癒してもらうことが無意識的に優先されます。子供を利用してご自分が抱えてこられた劣等感を払拭しようとする、あるいは恨みを晴らそうとする、といった場合もあるでしょう。よく言われる毒親の要因になります。
家庭内での問題が著しかったり社会的に不適応状態を呈していたりすると、自己愛性パーソナリティ障害と診断される場合があります。

自己愛的欲求は、家族以前の親密な関係=恋人関係においても再燃します。
また、職場においてもそういう傾向の方がおられます。その方が上司であれば、ハラスメント傾向が強く部下を精神的に追いつめる場合があります。巻き込まれないよう適切な距離を取ることが大事です。

職場の上司はもちろん、恋人やたとえ家族であっても、あなたがその方の自己愛を満たす必要はありません

身近な人について、またご自分について思い当たることがあれば、お話をしに来てください。
カウンセリングを通じ、こころの傷を癒し、病的でいびつな関係性からの解放をめざします。
相手の方やご自分についての理解が深まると、適切な距離が取れるようになり、関係性が良好になるでしょう。
いびつな自己愛による病的な関係性は、気づいたときに断ち切らないと、その連鎖が代を変わっても続いていく可能性があります。