(診断基準にない特徴について)
自己愛性パーソナリティ障害の傾向がある方は、発達早期(およそ2歳半~3歳まで)に母親からの共感的対応が乏しく、自己愛(本来は母親のまなざしに映っている自分を愛するという意味合い)を傷つけられたことにより「自分は愛されるに値しない=生きていくに値しない」という受け入れがたい無意識的観念にとらわれており、その絶望的でみじめな自分を抱えきれず身近な誰かに投げ込み、さげすむみ、けなし、おとしめることにより、愛される価値のない自分を自分の中からなくしてしまおうとする無意識的な傾向があります。
また、自分の価値が上がったり愛されたりする要素を供与してくれそうな人、自尊心をふくらませてくれそうな人を探し出し(親であれば子どもがその対象になる)、その人と融合し同一化することにより、自分で自分を愛する気持ちを高めることにより、本来の自己愛を満たし維持していこうとする無意識的な傾向も、同時に持ち合わせています。
したがって、自己愛性パーソナリティ障害傾向の方は、発達早期の母子関係と同様、他者と自己との境界認識が曖昧で、自分の利益のために平気で境界を越えて侵入し、他人を傷つけたり利用したりします。
自己愛性パーソナリティ障害傾向の方は、「他者に過剰な賛美を求め、自分を特別で重要であると誇大視しがちです。本来なら母親によって満たされる自己愛がいつまでたっても満たされないため、理想的で完璧な自分であろうとし、そうした自分に対する周囲の特別な評価を求め続けます。
一方で、無価値で愛されない自分に対する恥の意識が強く、他者から否定されることには非常に敏感です。周囲に悟られたり自分が傷ついたりしないよう尊大な態度をとったり、強迫的に完璧をめざしたり、ハイテンションにふるまったりして、自分をカモフラージュする傾向もあります。
情緒的には、他者に対して怒りや攻撃性を爆発させやすく、また共感的能力は欠如しており、相手の気持ちを察することが難しい傾向があります。自分の自己愛を満たすことが常に最優先であるため、他者の傷つきには無頓着で冷淡に見えます。
傲慢でひとりよがり、思い込みやうぬぼれが強いのですが、ひとたびそれが間違いや勘違いであったとわかった時には大変なショックを受け、打ちひしがれてしまいます。そこで、自分を立て直すために自分で自分を愛する自己愛のメカニズム(愛情欲求+自己保存本能)が発動します。
このようなパーソナリティの傾向を帯びてしまったもう一つの大きな要因として、親自信が自己愛性パーソナリティ障害傾向があり、子どものあるがままを受け入れられず、無意識的ではあっても、まるで子どもを親の自己愛を満たす道具であるかのような関わり方をした可能性があります。ご本人の言動や態度は、その方の親の関わり方と重なるところがあるのではないかと思います。
自己愛性パーソナリティ障害傾向の方は、親に満たしてもらえなかった自己愛を、無意識的に他者に満たしてもらおうと執拗に求め続けますが、恋人であっても伴侶であっても、あるいはご自身の子どもはもちろんのこと、親のレベルで満たせるわけはなく、怒りや苛立ちはエスカレートしがちで、容赦ない怒りや攻撃性にさらされ続ければ、その対象は複雑性のトラウマを抱えることになったり、その方自身もまた自己愛性パーソナリティ障害の傾向を帯びてしまったりする可能性があります。
パーソナリティ障害全般に言えることですが、自己愛性パーソナリティ障害傾向の方は特に、精神科クリニックを受診したりカウンセリングに来られたりすることは少ないと感じます。上記のようなパーソナリティゆえ、周りが問題であって自分は問題がないと思い込んでいる可能性があるからです。周囲から恐れられていることもあり、それゆえ指摘を受けることは少なく、ご自分のパーソナリティについて疑問を抱いたり認識したりすることはあまりないと思われます。
自己愛性パーソナリティ障害と境界性パーソナリティ障害は、どちらも自己愛の傷つきを抱えていると考えられますが、両者を比較するなら、自己愛性は「自分へのこだわりが強い」、境界性は「親へのこだわりが強い」と言うことができると思います。
ご自身や周りの方に上記のような傾向があると思われる場合は、一度お話に来ていただけるとよいかと思います。カウンセリングの中でありのままのご自分を受容され共感される体験とともに、ご自分の無意識的な傾向について理解を深められご自身で受けとめていかれるようになると、パーソナリティの変容が期待できると思います。
また、ご家族や上司など身近な方に自己愛性パーソナリティ障害傾向がある場合は、適切な距離をとってご自分のこころを守っていく必要があります。カウンセリングではそのためのお話合いをさせていただきます。
ご予約、お問合せをお待ちしています。
