自己愛が強い方というのは、ご自分が誰よりも愛され大切にされる存在であり誰よりも有能で特別な存在であるといった、自己中心的な充足感や優越感を常に求め続けている人と捉えられます。その方が他者の世話を焼いたり、好意や愛着、愛情を抱いたりするのは、しばしばそうしたご自身の利己的な目的を達成するためであったりします。こうした傾向は、意識的にやっている面もあるでしょうが、その理由や背景を考慮すれば、半ば無意識的なものと捉えられます。自分で自分を愛し続けるために他者から賞賛や承認、服従や献身を求めようとします。自分の目的のために他者を当たり前のように利用することがあります。いずれも幼いころの自己愛の傷つきを癒すためです。度が過ぎてトラブルを起こしがちであれば、自己愛性パーソナリティ障害と診断されることになります。
自己愛的傾向の強い方が職場の上司である場合、ご自分の評価や出世を何よりも優先するため、自分にとって役に立つ部下は目をかけ可愛がり、役に立たない部下に対しては、ハラスメントまがいの言動で傷つけ否定します。そこの分け隔てがはっきりしています。罪悪感や反省はなく、無能だから仕方がない、当たり前のことだと考えている節があります。部下の中には適応障害やうつ病になられる方も、当然いらっしゃるでしょう。
成人以降はパーソナリティが固定してしまいますので、そうした傾向が改善されることはあまり期待できません。事実をしかるべき部署に報告し、休職するか異動願いを出すなどして、ご自分を守るための対応に努めていただく必要があります。つまり、極力距離を置き関わらないことです。感情的に向き合えば傷つくのはご自身だと考えていただいた方が良いと思います。どうしても関わらないといけない場合は、仕事上の関係と割り切り、最低限の関わりにとどめ、反発や対立は避けた方がよいかもしれません。むしろ余裕があれば、たまにその方を持ち上げていい気分にさせる、その方の関心があることやプラスになることを提言する、といったことができれば、自分に怒りや攻撃性が向くことはなく、良好な関係が維持できるのかもしれません。
自己愛的傾向が強い親御さんの場合は、毒親になる可能性があります。子どもがご自分の思い通りにならないと機嫌が悪い、ヒステリックに怒る、ときには暴言を吐き体罰を与えるといったこともあるのかもしれません。子どもの気持ちや考えを汲むことや、その子の個性や特性を理解し尊重するといったことも難しいところがあります。子どものことを決めつけたり、どうしてお前はできないんだと感情にまかせて怒ったりすることが親として当たり前の態度だと思っています。「自分が不幸なのは子どものせいだ」といったことをあからさまに言われる方がおられますが、こうした言動も親が自ら改めることは望めません。おそらく、ご自分もそんな風に育ってこられたからだと思います。
子どもは親に見捨てられないよう言いつけを守り期待に応えようとしますが、いつもうまくいくとは限りませんし、うまくいくはずもありません、子どもを無視した無茶な要求だったりするからです。子どもは叱られたり怒鳴られたりすれば自分が悪い、自分ができないからだとご自分を責めがちで自己肯定感を持つことが難しくなります。
一方で、思春期以降になれば友人との比較から、自分の親は厳しすぎる、おかしいのではないかと気づき、反発や反抗を強める場合があります。そうして早々に親に見切りをつけ、親と距離をおき自分なりにやっていこうといった親離れや自立につながるなら、それでよいのではないかと思います。
それができない場合、例えば親が精神的に不安定で病弱である、経済的余裕がない、自営業等で忙しすぎる、片親であるといった家庭の複雑な事情が伴えば、子どもはそうした親から距離をおいたり見切りをつけたりすることが難しくなります。そうしていつまでも親の介入を受け支配されてしまえば、自分にいつまでも自信が持てず、精神的に不安定で自分の能力や可能性をあきらめてしまうことや、親と同様に自己愛的傾向を強め、ご自分の次の世代を同様に巻き込むことにつながる可能性があります。
「息子が~でなければ自分の子供だと認められない」「うちの子はあそこの子に負けるわけにいかない」といったことをおっしゃる親御さんがおられますが、自己愛が強い親御さんの典型例ではないかと思います。自分の夢を子どもに託す、小さいころから難関の私立校への受験を目指すといったことも、子どもに無理を強いて親の自己愛を満たす側面があるのではないかと思います。どこかの時点でそのことに気づかれ、子どもの意思を確認し、お子さんを尊重した軌道修正をしていただけると良いのではないかと思いますが、それは子どものためであり、子どもを愛するがゆえだと信じて疑わない傾向もあります。
自己愛的欲求が強い方は、自己愛が十分に満たされる時期、つまり母親の腕の中でおっぱいを飲んでいた赤ん坊の時期からおよそ歩けるようになる頃にかけて、世話や愛情を受けることや安心感や安全感に満たされる体験が十分ではなかった可能性が考えられます。その不全感が刺激されてしまう親密な他者や家族、あるいは職場や対人関係において、自己愛の渇きを貪欲に解消しようとする意識的無意識的な欲求が発動します。
自己愛的な方に出会ったときは、ご自分の心身を守るため、物理的にも心理的にも距離を置けると良いと思います。家族であっても同様です。家族は遠慮がない分、否定的、支配的介入がどこまでも続けば、心にダメージを受け続けるだけでなく、人生の選択を誤り親を怨むことにもなりかねません。関わり方や対応について一緒に考えさせていただきます。
また、ご自分について自己愛的傾向が強いと思われる方については、なぜご自分がそうした傾向を持つに至ったのか、その理由や背景も含めて理解を深めていかれ、家族や他人を巻き込むことなくご自分なりの方法でそうした傾向を軽減していけるようお手伝いをいたします。
