アイデンティティの確立とは、「自分はこんな感じの人」といった等身大の自分を理解し受け止め、また自分に対する周囲の印象ともあまりズレがなく、また受け入れられているという、自分についての肯定的な感覚のことです。
アイデンティティは、中学~高校の思春期を経て大学生くらいの年齢になると、多くの人が確立していく心理社会的な課題であり、社会に出る前にアイデンティティが確立されていることが望ましいと捉えられています。
したがって、社会へ出る前の大学在学中に自分についての理解を深め、方向性を見出せるといいのですが、中学や高校を出るとすぐに社会人になる方もいますので、勉強あるいは仕事をしながらアイデンティティの確立を目指すことになります。
一方で、「自分で自分がよくわからない」といった状態をアイデンティティの拡散と言います。アイデンティティが拡散している状態にあると、勉強をしていても仕事をしていても、自分が何をしたいのか、何のためにこれをやっているのか、どこへ向かっているのかわからない、そもそも何のために生きているのだろう…生きる意味や目的ってなんだろう…という考えにとらわれやすくなり、無力感や空虚感に襲われることになります。何をやっても夢中になれず楽しくなく、辛くて苦しいと感じやすく、生きている気がしない、早く死にたい、といった発想が浮かぶ場合もあると思います。
カウンセリングに来られる方の中には、アイデンティティが拡散した状態の方がいらっしゃいますが、特に20代前半の若者に多いと感じます。毎日仕事には行っていて適応はそれほど悪くはないが、人の目や評価ばかりを気にして目立たないよう失敗しないようにと神経質になりがちで、遊びや趣味もそれほど楽しいわけではなく、どこかさみし気で持って行き場のない思いを抱えているように感じます。
アイデンティティの確立を阻む要因は様々にあります。例えば、親子関係が密着している場合(過保護や過干渉)や友人関係が希薄な場合は、精神的な発達を妨げる要因になります。また、環境的な要因もあります。昨今、新型コロナが大流行し、子どもたちの活動範囲が極端に狭められたことも、精神の発達にかなり影響したと考えます。子どもが家にとどまると、外での活動が増えることで広がりつつあった親子の距離感を再度縮めます。それにより発達が停滞したり社会的なスキルの獲得が遅れたりすれば、精神的な自立の遅れにつながります。一方で、活動が狭まったことで封じ込められた子供たちのエネルギーやストレスまたフラストレーションは、出口を求めて依存対象へと向かいます。たとえばゲーム、ネット、SNSへの依存傾向が強まれば引きこもりがちになる可能性もあり、アイデンティティの確立は遅れてしまうでしょう。
ご自分やお子さん、ご家族に思い当たるところがあれば、カウンセリングに来ていただきたいと思います。ご自分やお子さん、ご家族を理解し、肯定されることにより、精神的な成熟を促し、アイデンティティの確立へとつながるカウンセリングをご提供いたします。
