境界とは、分かちがたい中間的な領域を指す意味合いで様々に用いられています。
例えば、境界知能(IQが知的障害には該当しないものの平均レベルより低い)や発達障害のボーダーライン(発達障害とは言いきれない程度の傾向がある)、境界例(ボーダーライン:精神病と神経症の病態をともに示す事例)といったい用いられ方をします。
精神分析では、他人の心の世界や外的環境とを分かつ自分の心の領域を「自我境界(ego boundary)」と呼びます。「自我境界」は発達過程を経るごとに明確になっていきます。「自我境界」が脆弱であれば、自分という認識が曖昧であり、他人から踏み込まれがちで自分も他人に踏み込みがちになり、心の距離が取りづらい状況になります。何かと刺激や影響を受け気分は不安定になりがちで、人に対しても同様に刺激や影響を与えてしまう可能性があります。
例えば、他人の存在や他人の目が必要以上に気になり避けたくなったり怖いと感じたりします。自分の存在が脅かされるとか、自分の内面(感情)が刺激されトラウマの再燃やさらなる傷つき体験につながるような、半ば意識できない恐ろしさを感じるのかもしれません。自分自身も他人に対し同様のことをしてしまう可能性もあります。
また、自分の気持ちや気分と他人のそれとの区別がつきにくかったり、あるいは自分が何を望んでいるのか何をしたいのかについてもよくわからなかったりするため、親が言うのであればそうなんだろう、みんながそうならそれでいい、といったあいまいさがあるのかもしれません。
他人の世話や面倒を見すぎる、他人の仕事や役割まで引き受けてしまう、他人事を自分事のように感じすぎていたたまれないといった線引きの甘さもあるのではないかと思います。
自分の心を守りきれず無防備にさらされているところがあるため、不用意に傷つくことになります。それが自分への攻撃だと捉えると、同様に攻撃的になり、一方で回避的になったりする場合もあります。
バリアー機能が弱いという意味合いで、心もからだも疲れやすいくストレスをためやすいのですが、一方で自分の疲れやストレスを自覚しづらいといった傾向もあるように思います。そうした場合は自ら加減ができないため、適応障害やうつ病といった精神疾患につながる可能性があります。あるいは、強いストレスがかかると、人によっては「現実感がない」とか「自分が自分でないような…」といった精神的な混乱を生じてしまう場合もあります。こうした場合は、精神科の受診をおすすめいたします。
上記のようにご自身の「自我境界」が脆弱になってしまった理由や背景があると思います。例えば、母親が過干渉あるいは過保護で、子どもとの心理的距離が適切ではなく、こころの境界線を越えて踏み込み子どもをコントロールしがちであるといったことや、幼いころの養育環境や養育状況に何らかの問題があり、自我境界の発達にネガティブな影響をもたらした可能性も考えられます。
こうした「自我境界」の脆弱さは、後のアイデンティティの確立の遅れ、あるいはHSP傾向にもつながるのではないかと考えます。
他者の影響や刺激を受けやすい、自分が無い感じがするといった方は、カウンセリングでご自分の「自我境界」を明確にしていきます。なぜそうなってしまったかについても話し合いをしていきます。カウンセリングが進んでいくと、これまで以上に精神的な成長や自立が感じられるのではないかと思います。
他方で、境界性パーソナリティ障害の境界性には、自他の心の境界が脆弱であるという意味合いとは異なり、疾患としてやや重い精神病性の病態とやや軽い神経症性の病態の中間に位置する病態の特徴を持ち得るという意味合いがあります。一方で、境界性パーソナリティ障害傾向のある方は自我境界が脆弱な人が多いというのも事実だと思います。自分の心の中にある気持ちや考えを投影して相手のものであるかのように思い込み、意識的にも無意識的にも操作しようとするといった傾向等がそれを物語っているのではないかと思います。したがって、ご本人もそうですが、周囲の方が困惑し苦悩することになります。
ご自身や身近な方が境界性パーソナリティ障害ではないかという疑いをもたれている場合についても、理解を深めお互いがよい方向へ進むお手伝いをいたします。
