(診断基準にない特徴について)

境界性パーソナリティ障害は、人間関係が活発になり親密度が増す思春期以降に顕在化する傾向があります。

境界性パーソナリティ障害の傾向を持つ方は、親の価値観や期待感を一方的に押し付けられてきた体験により、親をどこか神格化し恐れているところがあります。そしてそういう親に従えない、応えられない自分に対し、強い否定感や罪悪感を抱えています。そして親に対するこだわりをいつまでも捨てられないのです。

親に対し抱いてきた恐ろしさは、無意識的に周囲に投影されやすく他者から責められている迫害されていると感じやすく疎外感や劣等感を抱きやすいことから精神的に不安定になりやすく、人間関係においても問題が生じやすい傾向があります。そうした不安定な自分を立て直し支える無意識的な目的のため、思いのまま他者を振り回したり自傷や過食などの逸脱行為に依存したり、完璧をめざして強迫的な行為を繰り返す傾向もあります。

対人関係の不安定さは、母子分離段階(おおよそ1歳半~3歳)につまずきがあり、その頃の愛情喪失体験見捨てられ体験に起因していると考えられ、愛情に対し強い飢餓感があると捉えられます。

そうした愛情飢餓ゆえのしがみつき欲求が強い一方で、見捨てられ不安が強く、また自立すれば見捨てられるかもしれないという妄想があれば、親元を離れ難かったり自立が遅れがちになったりします。親が心の境界に侵入しがちで関係性が密着自我境界の脆弱さ)していれば、自我が未分化で、自分が自分になる(アイデンティティの確立)ことに強い不安と困難を抱えてしまいます。

親密な他者に対しても、親のように自分を丸ごと抱えてくれることを無意識的に期待し、自分の欲求に沿うようコントロールを目的とした試し行動をとる場合があります。

幼少期の親子(主に母子)関係において心的外傷(トラウマを受けていれば、対人関係の似たような状況でフラッシュバックなどが起き、パニック状態や解離状態に陥ることもあります。

境界性パーソナリティ障害傾向の方は、親に対する愛と憎しみのアンビバレンスな気持ちが併存しています。

情緒的には、親子関係と同様に他者との境界があいまいで自他の問題を混同しがち(自我境界の脆弱さ)であり、ささいなことで不安定になり、また傷つきやすく感情のコントロール苦手で、トラブルになりがちです。また、失敗か成功か、良いか悪いか、0か100かといった両極の認知傾向があり、誰かを理想化していたかと思えば、ささいなことで同じ人物をこき下ろすといったことも起きがちです。

また、親御さんについても子どもと同様、境界性パーソナリティ障害の傾向を持っている場合が少なくありません。情緒不安定な自分を支えてもらいたいといった無意識的な欲求があり、子どもの自立を阻み、いつまでも抱え込もうとする傾向があります。老いてしまった後は、子どもが自分から離れていくのではないか、見捨てられるのではないかと不安を感じた際に、それを阻止する言動や策を講じてしがみつこうとする場合もあります。

つまり境界性パーソナリティ障害の方には、幼いころに求めきれなかった自分を丸ごと受け入れてくれる「理想的な親」の役割を、恋人また伴侶、さらには自分の子供に対し、無意識的にまた際限なく求め続ける顕著な特徴があります。

境界性パーソナリティ障害傾向の親御さんの特徴としては、子どもの視点に立つとか子どもの気持ちを汲むことができず、自分たちの視点や価値観で考えがちであり、それが子どものためであり正しいことだと信じて疑わない傾向があります。そして、従えない子どもに対し許すことができず感情的に過剰に反応し、子どもが見捨てられるのではないかと恐れを抱くような言動や態度をとってしまいがちです。こうして子どもを支配しコントロールし続ける親であれば、毒親と言われても仕方がありません。
そうした親の関わり方が刷り込まれてしまう結果、親と似た傾向を帯びてしまいます。
親から欲しい愛情や世話をもらえず、親を受け入れ従うことの方が多かったことから、その足りない分を別の対象に求めざるを得なくなるのです。こうした傾向は、世代間連鎖という形で次の代へ引き継がれがちです。

自己愛性パーソナリティ障害境界性パーソナリティ障害とを比較するなら、自己愛性は「自分へのこだわりが強い」、境界性は「親へのこだわりが強い」と言うことができると思います。

親から与えられた自己から脱却しこれからの人生に新たな意味を見つけ出していく、そして親を卒業し自己を確立していく、親代わりになってくれそうな誰かに依存することなく自分で自分を抱えていく、そうしたことをカウンセリングでやっていけると良いと考えます。寄り添いお力になりたいと思います。