抑うつ気分(症状)は、ひどく落ち込んだ状態のことを言い、うつ病の代表的な症状の一つですが、うつ病ではなく他の精神疾患や身体疾患であっても抑うつ的な症状を伴うことがあります。うつ病は、ストレス、ショッキングな出来事、人生の転機や節目等により発症しますが、抑うつ気分になることは、日常の出来事や人との関わりの中で繰り返し経験します。 

抑うつ気分はそもそも、乳幼児期の母親との分離や喪失の不安にその起源があります。子どもの分離及び喪失不安が最も顕著に表れる時期は1歳半から2歳ごろと捉えられています。その頃には子どもは自分の足で自由に歩き走りまわり、母親がいなくても何でもできるような気分になっていますが、そうした万能感に浸り得意げである一方、自分が成長して赤ん坊でなくなると、母親がいなくなったり見捨てられたりするのではないか、といった分離不安や喪失不安も強く独立願望と依存願望のはざまで葛藤を抱えることになります。

この時期は、乳幼児の心身の発達において大変重要な時期であり、母親にとっても関わり方が難しく悩まされることになりますが、こうした困難な時期であるからこそ、精神的に未熟な子どもはトラウマ(心的外傷)を抱えがちになります。たとえば母親が次子の出産や世話のため、あるいは心身の病気のため自分の世話に十分な手をかけてもらえず自立を急がされる体験や、母親から無理に引き離される体験となってしまえば、子どもが恐れていた分離不安や喪失不安が的中したことになり、トラウマ(心的外傷を抱えてしまうことになりかねません。

その結果、母親との愛着関係に不全感が残り自分自身についても否定的に捉えやすく、幼いころから情緒的に不安定で抑うつ気分を抱えがちになれば、発達の早い段階でうつ病や双極性障害、あるいはパーソナリティ障害と診断される可能性が高まります。

さらにさかのぼれば、人間はだれしも母親の胎内からこの世界に生れ落ちる際に、母親との分離や喪失の危機と同時に生存の危機を体験しています。そのときの体験が過酷なものであれば、さらに精神の原初的な傷つき体験となり、抱えるトラウマ(心的外傷)も深く困難なものになる可能性があります。

子ども時代や大人になった後に抑うつになる要因はさまざまにありますが、たいていは人との関わりの中での出来事ではないかと思います。自分はダメだ、うまくいかない、失敗したといったことも、友人や仲間、組織がある中での出来事でしょう。そうした中で自分が見捨てられる、友人や仲間、地位や居場所を失い孤立するといった不安が、抑うつの背景にあると考えられます。

特別に愛着を向ける対象、例えば恋人伴侶子ども、あるいはペットからの分離や喪失は心に大きな負荷がかかり、うつ病になってしまう可能性があります。それは、母親に対してと同様の依存欲求を満たしてくれる(そう思い込んでいる)相手であるからでしょう。意識的無意識的に依存を強く求めていた時期、特に1歳半から2歳ごろに満たされなかった愛着の不全感不足感を、別の愛着対象との関係で満たしたくなる無意識的で本能的な欲求があるためと考えます。愛着対象への依存が強ければ強いほど、それを失ったときの抑うつ気分は強いと考えられます。その代わりの対象や行為でまぎらわしたしたくなる場合もあります。

抑うつ気分になった際は、人との関わりを避けたくなる方もおられると思いますが、そういう時は無意識的本能的に人との関わりを求めているのではないかと考えます。身近な方に打ち明け共有していただき、ご自分を立て直していかれることが必要になりますが、なかなかそうした気分になれない、適当な相手がいない、また友人に打ち明けてもわかってもらえる気がしないといったことを感じられる場合や、あるいは抑うつ気分に加え食欲がない、眠れないといった症状もあり、うつ病かもしれない、でも受診は抵抗があるといったことで悩まれている場合についても、ぜひ一度お話に来ていただければと思います。

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