自己愛的な傷つきがあれば、他者の些細な言動に傷つきやすく、また他者を意識的また無意識的に傷つける場合があります。

カウンセリングに来られる方の中には傷つきやすく立ち直りや切り替えがむずかしい」「生きづらいので気にしないようになりたい」と訴える方がけっこうおられます。ご自分の傾向を自覚しておられるのですが、変えることが難しいということも感じておられるようです。

自己愛と似たものとして自尊心プライドがありますが、自己愛的傷つきと比較すれば、自尊心やプライドの傷つきは、ご自分の意識的な努力と捉え方次第で比較的回復させやすいかもしれません。

自己愛が、最初に出会う母親さらには父親をはじめ、他者との心の境界意識が芽生える以前の心のありよう(おおよそ2歳半~3歳まで)であるのに対し、自尊心やプライドは、他者という存在と他者との心の境界、また他者との違いを認識できるようになってから芽生えるものであるため、そうした中で傷ついたとしても、同様に自己と他者との比較や関係性、また努力や成功体験の中で変化させ回復させることが可能なのだと考えます。

自己愛的な傷つきは、2歳3歳以前の家族の中(特に養育者との関係)での原初的な傷つきであり、また普段は無意識の中にトラウマ(心的外傷)として影を潜めていますが、いついかなる時であっても忘れ去られた過去の体験と重なる状況において、他者の些細な言動により一瞬でトラウマが刺激を受けることになります。過去の傷の上にさらに傷を負うことになればますます傷つきやすくなり、時には恐怖も伴うことでしょう。大人であっても未熟な心性(インナーチャイルド)が残っていれば傷つきやすいいうことです。

他方で、特定の状況やタイミングにおいて、あるいは恋人や伴侶、職場の部下、友人等、ご自分を受け入れてくれる依存相手に対し、攻撃的になる場合があります。自己愛的な傷つきがあれば、無意識的にその傷を癒し当時の満たされなかった欲求を依存先の相手に無意識的に満たしてもらいたくなるのですそのために攻撃的になったり思うように満たせないとわかると怒りをぶつけて傷つけてしまいます。これはある種、2歳3歳以前の未熟な心の状態への退行と捉えられます。残っている未熟な心性が親の代わりを求めてしまうのでしょう。

自己愛的傷つきがあれば、それは未熟で混とんとした心の傷つき体験を抱えているということであり、そのため刺激を受ければ傷つきやすく、また傷つけやすい傾向をもつということになります。

こうしたご自分の心の反応に気づき、これを変えたいと思われるのであれば変えることができると思います。

なぜご自分が自己愛的傷つきを抱えることになったかについてわかっていかれるとよいと思います。2歳3歳ごろまでの記憶をたどるのは難しいことですが、思い出される家族の中の状況や出来事は多少あるのではないかと思います。またお話をされていくうちに思い出されることも増えていきます。どのような些細なことであっても、気になることや思いついたことをお話しいただければ、やがて点と点が線となりお話がまとまっていきます。そしてこれまでのご自分のストーリーがわかってきます。

あなたが傷つきやすい人、また傷つけてしまいやすい人であるなら、それはこれまで気づけなかったご自分の中のトラウマ=欲しい世話や愛情、関心、空腹時の乳を満足するまで与えられず(乳幼児の一方的な願望)、悲しみと空腹感で絶望的になった傷つき体験を刺激してしまったためではないですか。そのことを事ことあるごとに意識していきます。

また、時として親密な他者に攻撃的になるのは、そうした体験に対する怒りや憎しみ、嫉妬やねたみといった混沌とした否定的な感情が、意識できない心の奥底に渦巻いているためではないですか。そうした感情をぶつけたい相手は、実は目の前の他者ではなく母親をはじめとする養育者に対してなのかもしれません。そうした感情に事あるごとに向き合っていきます。

そして、そうした未熟な心性を等身大の大人のご自分がわかってあげ癒してあげて大人に成長させてあげるということになります。ご自分でご自分を抱えていきます。

このように、自己愛的傷つきが未熟で幼いころの養育者との関係における傷つきだとしたら、また養育者に求めきれなかった愛着関係があるのだとしたら養育者の代わりに他の誰かを求めようとしても、他の誰かに満たしてもらおうとしても、それは到底無理なことであり、まして攻撃性や怒りをぶつけて傷つけるのはお門違いであるということを意識的に踏まえていきます。

本当のところはどなたに対しどのような感情を抱えているか他者とご自分の心の境界を明確にすると共にご自分の心の中に潜む感情を整理することができればよいと思います。そうして心の整理がついてくれば、心の奥底に残っていた未熟な心のありようは成熟し、年齢相応の等身大のあなたの心と一体となることでしょう。インナーチャイルドが成長するということです。そうなればひどく傷つき落ち込み引きずることや、むやみに他者を傷つけることが少なくなり、感情を意識的にコントロールすることができるようになるのではないかと考えます。

お心当たりがあれば、ご相談にいらしてください。お待ちしております。

言動が逸脱しすぎる、他者との関係に問題を抱えがち、周囲をふりまわしてしまう、また精神的に不安定、対人関係を回避し引きこもりがち、といった著しい傾向をお持ちで社会適応が困難である場合は、パーソナリティ障害や重篤な精神疾患の可能性もあります。
まずは心療内科や精神科にご相談されることをおすすめいたします。